薄情な姉弟
ある日の夕方、息子が来て帰り際に言った。「今日、⚪⚪のお婆ちゃんの命日だよ、忘れてるんじゃない?」
はっとした。「母親の命日なのに忘れちゃダメじゃないか」と言われて血の気が引いた。
この子は私の母が大好きで、母も初孫だった息子を一番可愛がってくれた。お葬式の日は棺に納められた母(祖母)の側で男泣きした息子だった。あれだけ泣かれたら母も本望だろうと内心私は思ったものだ。
私は一卵性親子と言われるほど母親ベッタリの甘えん坊だったが、大人になってからは母に対して冷ややかで批判的な言葉を吐くこともあった。決して仲が悪い訳ではないが自分の方が大人だと思い上がっていたのだ。
情けない。本当に情けない娘だった。過去形ではなく今も情けない薄情者だと自覚している。母の命日を忘れるほど多忙で頭がいっぱいいっぱいなのだと自分に言い訳してることに腹が立った。
その夜、実家の弟に電話した。
なんと、あろうことか弟も忘れていた。姉弟二人して大バカなのである。母もきっと苦笑いしてるだろうな。